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無意識な発言が職場に軋轢を生む:マイクロアグレッション
重要な経営課題の1つとして、多くの企業が取り組んでいる「ダイバーシティ推進」ですが、多様な人材の活躍、そして業績アップにつなげるインクルーシブな環境を整える難しさに直面している企業は多いようです。その困難な理由の一つとして、最近のBBCニュースで「マイクロアグレッション」が取り上げられていました。
あまり聞き慣れない「マイクロアグレッション」という言葉ですが、1970年代に精神科医で、ハーバード大学医学大学院名誉教授でもあったチェスター・ピアス氏によって作られた造語で、2015年にようやく"Oxford English Dictionary"にも追加された新語のようです。
「マイクロアグレッション」は、自分とは異なる人種やジェンダー等に対して、心の片隅に無意識に抱いているステレオタイプや偏見から生まれる悪意のない言動が、知らないうちに相手を傷つけたり、不快にさせてしまったりする行為のことです。無意識な言動のため、発言者にとっては非常に分かりづらいものですが、日常的に起こっている現実があるようです。
BBCのニュースでは、「女性のCEOに対して『あなたの上司と話すことはできますか?』と問いかけたり、男性の看護師に対して『あなたのような男性の看護師はあまり見かけません』と話しかけたりする」ことが、「マイクロアグレッション」の例として挙げられています。
これらの発言の中には、「CEOは男性であることが多いだろう」、「男性の看護師は珍しい。通常は女性の看護師が多い」という無意識なステレオタイプや偏見があるのではないかと受け取られてしまい、悪意はないとは言え、相手に不愉快な思いをさせてしまうことになります。
皆さんの職場でも、自分は悪気なく質問したことや話した内容に対して、相手が否定的な反応をしたことや、疎外感を感じてしまったり、不愉快な思いをしたりしたことはないでしょうか?
ダイバーシティが豊かな職場ゆえに、意図することなく起こってしまいがちな問題ですが、その人の立場や状況によっては、「マイクロアグレッション」を相手に感じさせてしまうことで、離職を考えさせてしまったり、メンタルヘルスの不調に陥ってしまったり、様々な問題が発生する可能性があると言われています。
自分とは異なる立場や状況にいる人に対する何気ない言動によって、このような問題が起こってしまったら、まずは、起こってしまった事実を認識することが重要だと考えられています。解決策としての即効薬とは言えませんが、個々人の違いが尊重され、組織やチームの一員として、疎外感を感じることなく、能力を発揮できるインクルーシブな環境作りのための大切な一歩になるのではないでしょうか。
AMAでも2017年にこのような問題を改善するための考え方やスキルを学習する研修として、"Leading in a Diverse and Inclusive Culture"というプログラムが開発され、日本においても、6月に公開セミナーが予定されております。
このプログラムでは、人種やジェンダーだけではなく、ジェネレーションや仕事の経験等、様々な角度から幅広いダイバーシティとインクルージョンについて取り扱っております。一部ではありますが、「マイクロアグレッション」についても、触れております。