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「心理的安全性(Psychological Safety)」を高める (2)
コロナ禍での働き方 リモートワーク(テレワーク)に必要な環境
「心理的安全性(Psychological Safety)」を高める(1)では
前回の私のブログでは昨今注目を集めている「心理的安全性」を取り上げました。心理的安全性とは何か、そしてそれが低い・無い状態、また反対に高い組織について書いてみました。今回はその続編で、心理的安全性の高め方について、色々な方法、考え方のいくつかをご紹介します。全ての基本は、責任転嫁をしないマインドセット
あるプロ野球の二軍コーチの話です。「若手選手の中でやがてレギュラーになっていく選手と、ずっと二軍のままで終わる選手の違いは、技術の差ではなく意識の差です。レギュラーになれない選手は、二軍へ行くように言われた時、『二軍に落とされた』と言います。つまり、自分が二軍行きを命じられたのは自分のせいではなく、一軍のコーチに見る目がなかったからだと責任転嫁するのです。その表現の中には弁解と恨みが含まれています。こういう選手に限ってエラーをすると、道具のせいにしたり、グラウンド整備の悪さのせいにしたりして文句を言うのです。こういう選手は絶対にレギュラーになれません。」私自身も責任を転嫁してしまうことがよくあります。まだまだダメですね。この話を通して、責任を転嫁せずに、自分を「問題」の一部として捉えることに気づかされます。常に自らも当事者になるのです。
職場に心理的安全性が無いのは、私以外の周りの人の責任でしょうか?それとも私にも責任があるのでしょうか?私が問題の外にいるのなら、決して状況を変えることはできず、良い影響を与えることはできません。そして、心理的安全性が無い職場でずっと我慢するしかないのです。先ずは、全てのことに対して責任を転嫁せずに、主体的なマインドセットを持つことが必要です。このようなマインドセットを持つことで、スキルをより活かすことができるようになります。
リーダーシップという影響力
課長、マネージャー、部長等々、これらは職場のリーダーとしての役職、ポジションです。リーダーシップは任命された人たちだけが行使するものではありません。リーダーシップは立場に関係なく、新入社員でも超ベテランでも、誰もが使うことができるスキル・能力です。私たちは研修の中で、リーダーシップのことをずばり「影響力」と定義しています。役職・ポジションは、ある意味パワーです。しかし役職が無い人は、そのパワーがありません。その代わりにリーダーシップという影響力を発揮することで、職場の心理的安全性を高めることができます。これから述べることは役職に捉われず、全ての人にとって有効です。勿論、リーダーの方にとっては必須スキルだと言っても過言ではありません。リーダーシップの類型を柔軟に使い分ける
リーダーシップと言っても、いつくもの種類があります。ハーバード大学のデイビッド・マクレランド教授と彼のチームは以下のようにリーダーシップは6つの類型に大別できるという研究結果を発表しました。皆さんの職場の上司、またはご自身のリーダーシップはどれに当てはまりますか?このように分類されると、今の時代、私の職場にあっているスタイルはどれだろうか?と「最良のスタイル」を探したくなりますが、実際はそれぞれが補完関係にあります。どれが良い、悪いのではありません。つまり特定のスタイルに固執せず、柔軟、且つ冷静に、状況、相手に従って、これらのリーダーシップスタイルを使い分けることが賢いやり方です。あくまでも、しなやかさ・柔軟性が大切です。
例えば、あなたのリーダーシップスタイルが指示命令型だとします。部下のAさんはあなたの指示が明確なのですぐに行動に移しやすいと考え、成果も発揮します。結果が出ているので、あなたとAさんとの関係も良好で、話しやすい関係にあります。つまり、心理的安全性が保たれている状態です。一方で、部下のBさんはあなたの指示命令型のスタイルとの相性が良くありません。どちらかというと、Bさんは独立心が高く、Bさん自身のやり方があり、マイクロマネジメントされるのを苦手としています。結果、Bさんは上司のあなたに心を開かず、会話の量も少ない。あなたもBさんに対して、苦手意識を持ってしまっています。このような二人の間には心理的安全性はありません。Bさんのような部下を持つ場合は、指示命令型は通用しないので、民主型、もしくは育成型のスタイルを取り、Bさんの自主性を重んじ、じっくり時間をかけていくことが必要です。そうすることで、上司のあなたはBさんに対して良い「影響」を与えることになります。そして、Bさんもあなたに対して心を開くようになり、多くの話をしてくれることでしょう。Bさんもあなたに良い「影響」を与えることになるのです。先ずは自分のスタイルを理解・把握することが必要です。分からない場合は第三者の目で評価してもらうと良いかも知れません。その上で、自身のスタイルの強みを活かしつつ、他のスタイルについても学びを深め実際に適用、練習してみると、少しずつ心理的安全性を高めることができるはずです。
行動科学的アプローチ
あなたの職場で、次のような会話がありませんか?会話例(1)
上司:「最近、元気ないじゃないか。元気出そう。今月、今年の目標は○○だ。皆で頑張ろう!」
部下:「はい、分かりました!(心の声:こんな高い数字、無理でしょ。自信ない)」
会話例(2)
あなた:「明日のA社へのプレゼン、自信ないんだよな」
同僚:「大丈夫。自信を持って!頑張れば、できるよ」
あなた:「・・・・・・」
このように周りの人は良かれと思って励ましてくれても、この人分かっていないなと思うことはよくあることです。そのようなことが度重なると、どんどん相手との距離は遠くなり、心理的安全性は弱まるばかりです。頑張れと言われて心が元気なる。自信を持ってと言われて自信満々になる。そのようなマジックワードは現実にはそうありません。人の(私の)心に影響を与えることはとても難しいことです。それでは、どうしたら良いのでしょうか?相手の「心・性格」よりも、相手の「行動」にフォーカスを当てることの方が影響を高めるのに効果的です。
動物がある行動をした後、1分以内に肯定的メッセージを受け取ると、その行動を繰り返すようになります。このことを行動の「強化」といいます。ペットの犬にお座りを教える際、うまくできた時はご褒美に餌をあげると覚えてくれます(たまに駄犬もいますが)。動物と違い、人間の場合は2週間有効です。反対に、否定的なメッセージを受け取ると、絶対にその行動はしなくなる、これは行動の「弱化」と言います。
「感謝」する
行動の強化を促す即効性のある方法のひとつに、意図的に「感謝する」というやり方があります。これは精神論や気持ちだけのことをいっているのではありません。非常に具体的で、且つ、比較的実践が容易です。相手への指摘、アドバイスは躊躇しがちですし、相談・依頼も相手に遠慮してできないこともあります。またアイデア・改善案があっても否定されることを怖れ、出しそびれてしまいます。しかし、「感謝」は案外簡単にできるものです。心理的安全性を高めるために、この「感謝」を戦略的に使ってみると意外と効果的です。使い方のステップは以下の通りです。- いつ、どのような状況で、誰(個人・チーム)が、何をしてくれたかに思いをはせる
- 他でもない私が助かった、ありがたかった出来事や行動を掘り下げる
- 実際に感謝を伝える(直接、メール、オンライン等々)
無理に感謝なんかできない、わざとらしいと思う方もいるかも知れません。上記1で「思いをはせる」とある通り、人、行動、もの、サービス、仕事、今ある状況・状態がどうしてこうなんだろうと思いをはせるのです。そうすると、感謝することは意外と見つかるものです。そして伝えるのです。これを繰り返していると、メンバーを注意深く観察する、気にかけるようになってきます。メンバーもあなたの変化に気付くでしょう。初めは表面的なテクニックだったものが、いつの間にか職場の心理的安全性を高めることになってくるものです。
部下の立場からも上司に良い「影響」を与えることができます。私の体験談ですが、若手時代の私の上司は昭和の古いスタイルの人で、普段は一方通行的なコミュニケーションを取る人でした。ある時、余程困っていたのでしょう。珍しくもミーティングで私に意見を促しました。会議後、上司のところに行って、私はこう言いました。「先ほどは、話しやすい状況で意見を述べる機会をいただき、本当にありがとうございました。」以降、その上司は変わりました。我々メンバーの意見を積極的に聞くようになり、随分と話しやすくなりました。僭越ながら、行動強化の成功例と言えるかもしれません。私たちの職場の心理的安全性が高まったことは言うまでもありません。
今年初めてのブログで私はこう書きました。「私たちの周りにある『感謝』すべきことを数えてみてはどうでしょうか。思いのほか、数多くあることに気付くことができるかも知れません。コロナの影響で大変だったが会社が存続している、仲間がいる、働くことができている、お客様が必要としてくれている、待ってくれている。そして、2021年のスタートを切ったばかりの今こそ、『感謝』と『希望』を言葉で語ってみてはどうでしょうか。」
感謝の言葉が行き交っている職場、何て素敵なことでしょう。簡単に手軽で始めることができるので、是非実践することをお勧めします。
最後に:Serenity Prayer(静穏の祈り)
恒例になりますが、私のブログでは過去の有名人、著名人を言葉・格言を紹介して、終えています。今回はこちらの言葉を皆様にお送りします。アメリカの神学者ラインホールド・ニーバーがマサチューセッツ州西部の山村の小さな教会で1943年の夏に説教したときの祈りです。これを皆さんに紹介したいと思います。「静かな願い」とも「3つの願い」ともいわれています。
- 変えられることを変える「勇気」を、私に与えてください
- 変えられないことを受け入れる「静かな心」を、私に与えてください
- 変えられることと変えられないことを見分ける「知恵」を、私に授けてください
この祈りのように、心にしなやかさ・柔軟性を持ち、皆様に関わる全ての人たちが幸せにお仕事できることを願っています。そして、皆様の職場に真の心理的安全性が築かれますように。
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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。