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Diversity, Inclusion, and Belonging (DI&B): ダイバーシティの次のステージ“Belonging”

 

日本では、2000年前後にダイバーシティという言葉がメディアで見られるようになりました。新聞紙上では、1999年の日経新聞「人材の多様性、日本で説く、米IBMリンダ・サンフォード氏」の記事で初めてダイバーシティが取り上げられました。それから20年の間に、ダイバーシティに包括性を意味するインクルージョンが付けたされました。そしてこの数年で米国企業ではBelonging (親密な関係、相互的信頼) が付加され、Diversity, Inclusion & Belonging (DI&B) となり始めています。先日行われたAMAのグローバルミーティングの中で使われた資料では既に、DI&Bと表記されていました。

数年前にWharton Schoolで行われた“Fostering Belonging at Work”イベントでは、このBelongingに関して次のような話がされています。イベント登壇者の一人、当時Citiでグローバルダイバーシティ&タレントマネジメントのシニアバイスプレジデントだったSamuel P. Lalanne氏は「Belongingは“the evolution of the journey” (ダイバーシティという旅路の進化系だ) 」とコメントしています。
また、何故D&Iにさらに新しい言葉を追加しないといけないのか、D&Iで十分ではないかという質問に対して、登壇者たちは「インクルージョンだけでは足りず、各人の声を皆が聴き、互いの間に障壁を感じず、それぞれの異なる経歴を尊重し合えることが必要だ」と答えました。さらに「D&Iは、多くの場合数値的な目標に置き換えられてしまい、人の感情的側面が抜け落ちてしまっている」と問題点も指摘しています。

帰属意識との違い

帰属意識を英語にすると“Sense of Belonging”と表現されますが、DI&Bの中で使われるBelongingとは意味が異なります。多くの場合、帰属意識とは「会社の一員」という感覚や企業理念、経営方針に対する共感、自社サービス・商品などへの愛着を持っていることを包括した意味として使われます。この場合、組織が中心にあり、そこに従業員が帰属し従業員のダイバーシティは考慮されていません。帰属意識を表す例としては「会社の代表として、どこにいても恥ずかしくない言動をとるべきだ」のような考えがあります。このような考えはとても素晴らしい一面がある反面、組織が従業員のダイバーシティを尊重しているとは言えません。多くの日本企業では、帰属意識が強い=会社を中心に捉え従順、という意味で使われることが多いのではないでしょうか。
DI&BでのBelongingとは、これとは真逆の観点で、組織・周囲の人が各従業員のダイバーシティを尊重し受け入れるという意味で使われています。Belongingを定義する際には“sense of being accepted and included by those around you” (周囲の人達に受け入れられた、仲間にしてもらった、と本人が感じていること) のように表現されたりします。
これは組織に対する意識や文化の違いが影響していると考えられます。個人主義の強い文化圏と集団主義の強い文化圏、あるいはハイコンテクストとローコンテクストの文化圏の違いで、Belongingの考え方に差が出てくることは容易に推測できます。

日本の企業がBelongingを高めるには

個人的な考えですが、日本文化や日本的経営の三種の神器 (終身雇用・年功序列・組織内組合) が影響し、日本的帰属意識ができ上がってきたと思います。これは会社との信頼関係を構築するにはとても効果的な方法だったように見受けられます。企業が従業員の生活に責任を持つ代わりに、従業員は会社に自分の生活を捧げます。このようなことは、ジェームス・C・アベグレン著書『日本の経営』でも書かれているように、日本企業の成長の土台となっていました。
日本の帰属意識は、とても素晴らしい意識でさまざまなことに良い影響を及ぼしています。しかしながら、外部環境の変化でこのような経営が難しくなっています。このような状況で帰属意識を補完しながら、Belongingを高めるためには、企業は従業員の生活に責任を持つ代わりに、自由と多くの選択肢を従業員に提供することが重要になります。ある程度の自由とそれぞれの勤務状況に合った選択肢を提供することは、結果的に従業員の状況を理解しダイバーシティを尊重することになります。こうすることで、従業員は自分が理解され受け入れられていると感じ、自主性が高まります。

このことは、AMAが米国で行った調査結果*からも明らかになっています。COVID-19の影響で増えた在宅勤務の従業員への影響調査では、回答者の61%が「以前と比較し自分の自主性が高まった」と回答、さらには、回答者の74%が「仕事に対して、より柔軟に、より機敏に対応できた」と回答しています。COVID-19以前では、多くの企業やマネージャーが外発的動機付け要因にフォーカスし従業員の管理をしていたのに対し、在宅勤務の状況では、今までと同様の管理ができず、従業員の自主性にまかせマネジメントを行った結果このような変化が起きたことが推測できます。
この調査では、Belongingの度合いを調べていませんが、自主性を発揮できたことは、各従業員が自分の考えや主張を周囲と共有し受け入れられ、実行に移せたことを暗示しており、それはBelongingの定義の一部である「受け入れられているという自覚」をする機会があったのだと考えられます。

日本の企業でも、同様に従業員の自主性と機敏性が増しているかもしれません。そうだとすると、COVID-19の終息後もある程度の自由とそれぞれの勤務状況に合った選択肢に基づくマネジメントをすることで、帰属意識やBelongingを高めることができると考えられます。

最後に、上記のような組織としての取り組みではなく、周囲の人のBelongingを高めるために個人でもできることが、ハーバードビジネスレビューで紹介されていました。

  • 小さなことで他者とつながる機会を活用する
  • 思い込みは控える
  • 相手は善意を持っているとみなす
  • 弱みを見せても良い
  • 一貫性と責任感を持とう

*AMA調査結果は、資料ダウンロードページ「不確実な環境における人材の変化」で参照していただけます。

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本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
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筆者紹介
加藤洋平(カトウ ヨウヘイ)
クインテグラル株式会社 取締役

クインテグラルの前身であるAMAの日本支社に2008年に参加し、組織開発、グローバル人材育成、次世代リーダー育成、などさまざまな学習理論に基づき幅広いソリューションを構築、提供している。人の可能性を最大限開花させるお手伝いをすることをミッションとし、日々の業務と継続的な学習をおこなう。

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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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