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能力主義、成功、自己責任論、運、そして自利利他
MLB大谷翔平選手の大活躍
野球が詳しくない方も、岩手県奥州市出身の大谷翔平選手がメジャーリーグを賑わせていることはご存知でしょう。今年は怪我の影響からも大分回復し、ピッチングに、そしてバッターとしてはホームランキングとして大活躍中です。これまでの大谷選手の努力や才能が一気に今年開花したように映りますが、果たして、今の成功の全ては大谷選手の能力と努力によるものなのでしょうか。今回のブログは、能力主義という観点から書いていきます。
能力主義の弊害
人は成功するために能力・才能を磨き、努力し、時が経つと開花します。また私たちは人が持つ能力に大いに頼り、利用さえします。人の良いヤブ医者よりも、人当たりは悪いが腕の立つ医者を頼ります。能力・才能を追求すること、そして頼ること自体は益であり、それ自体は何も悪くありません。ビジネスの世界では、時間・体力・経済を最大限投資し、競争相手に勝つために努力します。これも決して悪いことではありません。
ここからは、人が陥り易い傾向について説明していきます。勝利した時、達成感や誇りを感じ、自分たちの成功は自らの能力と努力によって勝ち取った、自分の手柄だと考えます。そして手に入れた地位や名誉、そしてインセンティブを受けるのは当然の報いだと考えがちですね。 (英語ではI should deserve the award.と言います) 反対に敗者は大した努力をしなかったから、当然負けたのだと考えるでしょう。何も得られなかったのは、当然だと考えます。果たして、これは真実でしょうか?
「新型コロナウィルスに感染するのは本人が悪い」
話が少し変わりますが、2020年、三浦麻子 大阪大教授ら心理学者の研究グループが、「感染する人は自業自得だと思うか」との質問に「 (どちらかといえば、やや、非常に) そう思う」と答えた人の割合が、日本は米国や英国などと比べて高かったという調査結果を発表しました。国内で感染者が非難されたり、差別されたりしたことと、こうした意識が関係している可能性があるとしています。米国1%、英国1.49%、イタリア2.51%、中国4.83%だったのに対し、日本は11.5%で最も高かったそうです。反対に「全く思わない」と答えた人は、他の4か国は60~70%台だったが、日本は29.25%とのこと。三浦教授は「日本ではコロナに限らず、本来なら『被害者』のはずの人が過剰に責められる傾向が強い。通り魔被害に遭った女性が、『深夜に出歩くほうが悪い』などと責められることもある。こうした意識が、感染は本人の責任とみなす考えにつながっている可能性がある」と述べています。
米国人よりも11.5倍の日本人が新型コロナに感染するのは自業自得、自己責任だと考えているということを知った時、私は驚いたと同時に非常に悲しく思いました。端的に言うと、優しくないなと感じました。誰も感染したくはありませんし、一生懸命努力していても、感染してしまうものはしてしまいます。それを本人が悪いと思うのは、余りにも度量が狭いと感じました。想像力を働かせて、それは私にも起こりうる (I can be your position.) という意識、感覚を持つべきではないでしょうか。
成功は運?
閑話休題、同じ能力があり、同じだけ努力しても、現実の世界では成功する人とそうでない人に分かれます。立身出世のストーリーは人を励まし、畏敬の念を生みますが、全ての人が成功するわけではありません。成功と勝利は、必ずしもその人の能力、努力だけではないと私は考えます。「運」というものが成功を左右すると言ったら身も蓋もなくなってしまいますが、大いにあり得るのではないでしょうか。違う言葉で表現すると、環境、時代、人間関係に相当します。例えば、ビジネスで成功したのは、今年営業成績が良かったのは、良いお客様に恵まれたから、お客様の状況が良かったから、上司やメンバーに恵まれたから、あの人のアドバイスがあったから等々、自分の能力や努力以外の要因が多くあることに気付くことでしょう。能力主義が行き過ぎると、勝ち組・負け組という分断をもたらしてしまいます。人は何度も誤り、何度も間違う生き物ですから、勝った側にはついつい驕りというものが生まれてしまいがちです。しかし、成功した要因を謙虚に受け止め、全てを謙虚な姿勢からスタートすることができれば、驕りや分断を断ち切ることができ、感謝が生まれます。お客様に、上司や同僚に、そして自分の運に感謝するようになります。
反対に失敗する人を見る時、自分ができたのにお前はできないのかという態度を示すのは止めたいですね。驕りの感情や優越感を持って相手に接すると、屈辱感と怒りを引き出すだけです。何の意味もないと私は思います。前述の調査結果のように自業自得、自己責任と考える傾向が日本人には多いようですが、失敗は誰にでにも起こりうるものです。むしろ、相手に寄り添う思いやり (Compassion) を持って接する方が、良い世界を作れるのではないでしょうか。そして、自分も失敗することを忘れてはいけません。失敗しても、そこから這い上がれば良いだけの話です。
因みに、大谷翔平選手のお父様は社会人野球の有名な選手で、お母さまはバトミントンの選手だったそうです。お二人が出会うことで、運動選手としての優秀な遺伝子が翔平君に受け継がれていきました。 (これは極端な例かも知れませんが、大谷選手が野球のない江戸時代に生まれていれば、野球で活躍することはありませんでしたね。これも運かもしれません。) また同郷に菊池雄星選手 (現シアトルマリナーズ在籍) に憧れ、彼の出身校の花巻東高校に進学しました。 (菊池選手が同郷、これもすごい運です!) 愛情豊かな先輩と監督は、翔平選手のために昼寝させてあげようとかなりの時間を確保してあげたそうです。大谷選手がアメリカでも愛されているのは、自分の能力や努力に驕ることなく、関わる全ての人、ファン、そして環境に感謝しているからかも知れませんね。 (誤解を恐れず、私は大谷選手の能力・努力は一切否定しません。)
自利利他
「自利利他」とは仏教用語で、「自らの仏道修行(努力)により得た功徳を、自分が受け取るとともに、他のためにも仏法の利益をはかる」という意味だそうです。聖書では「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」という言葉があります。これは私なりの解釈ですが、自分の利と他者の利は繋がっていて、区別・分断することができないということです。能力を最大限に生かし、努力した結果、成功・成果を生み出したら、それを自分だけのためにではなく、他のためにも使うということだと考えます。簡単に言ってしまえば、これこそがWin-Winですね。
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最後に
「人の心の高慢は破滅に先立ち、謙遜は栄誉に先立つ。」箴言より
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