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経験を通して学ぶ、大人が学ぶためのマインドセット

経験から学ぶ学びは「宝」

 今回は「マインドセット」について思うところがあり、私の経験を通して、このブログを書いていきます。

きっと私は幸せになれる?
 ある人が言いました。「学校で良い成績を取って、有名中学校、高校、大学、大学院に行けば、きっと幸せになれる」「良い会社に就職すれば、幸せになれる」「会社で目標を達成すれば、幸せになれる」「すてきな人と結婚して、すてきな家庭を築けば、幸せになれる」「定年時に〇〇〇万円あれば、幸せになれる」「環境設備やサービスが抜群の老人ホームに入れば、幸せになれる」そして、この人は最後にこう言うのです。「葬式は盛大にして、たくさんの知人や家族に見送られたら、きっと私は幸せになれる」

 さて質問です。この人は幸せになれたのでしょうか。これは私の作り話ですが、答えは幸せになれませんでした。幸せのために頑張り、努力した人でしたが、結局は幸せをつかみ損ねてしまいました。多くの人は「努力すれば、成功する。そして、成功すれば、きっと幸せになれる」と思っていないでしょうか。「努力と頑張りは絶対条件で、成功しなければ、幸せになれない」と人が勝手に作った図式・ゴールデンルールに従って生きていないでしょうか。

 もしこの図式が正しいのであれば、良い学校や一流企業に入った全ての人は幸せになります。経済的にも裕福で、地位と名誉を獲得した人は誰もが幸せのはずです。しかし、現実にはそうではないようです。昨年末、有名な歌手が自ら命を絶ちました。この歌手は努力の人で、成功を手に入れました。そして、これからもっと活躍するだろうと期待されていた矢先でした。本当に残念で悲しいニュースです。その時、私はこう思いました。この図式の中で私たちが生きている限り、有名大学に入ったとしても、会社で昇進・昇格しても、何かの目標を達成しても、成功のゴールはさらに遠くに押しやられてしまい、きっと人はいつになっても幸せになれないと。

幸福についてのマインドセット ― I am enough!
 「努力→成功→幸せ」の順番の図式ではなく、全く逆の発想とマインドセットが必要かもしれません。私は既に幸せだから、力を注ぐことができ、最終的に成功するというマインドセットです。つまり幸福感からスタートし、成功は後です。幸せだから成功するのです。力を注ぐことを傍から見れば、努力しているように見えますが、当の本人は幸せで楽しんでやっているので、決して努力を苦とは思わずに行動していることでしょう。

 私はこのような考え、つまり、今の状態を肯定し、“I am enough!” (私は満たされている!) というマインドセットを米国での学生時代に得ることができました。それまでの私は前述した古い図式に従って生きてきた典型的な日本人でした。米国で幸福先行型の友人や知人とのコミュニケーションや触れ合いを通して、多大な影響を受け、このマインドセットを身に付けました。

 この幸福先行型について米国ハーバード大学でアカデミックに研究した人がいます。それは、ショーン・エイカー (Shawn Achor) で、ポジティブ心理学の第一人者です。彼の研究結果は“The Happiness Advantage”に書かれていますので、手に取ってみてください。幸福先行型の考えを持つ人の方が、成功している確率が高いと数多くの調査データを紹介しています。ちなみにこの本は2010年発行ですが、私の学生時代はそれからさかのぼること〇十年ですから、私の方がこの法則を見いだしたのは早いですね (笑) 。私は負けず嫌いの性分なのです。

 当時、この本は存在していなかったので、いくつかの痛く苦しい経験を通して、生きる上で必要を感じて獲得したマインドセットでした。アダルトラーニングは学ぶ必要性を理解し、体験や話し合いを通して学ぶものです。まさしく私の場合もそうでした。この“I am enough!”というマインドセットを私は「宝」のように大切にし、生きていく上での信条としています。

失敗から学んだ「信頼」についてのマインドセット
 先日、私は大きな失敗をしてしまいました。時間をかけて培った信頼と人間関係を私の不注意と相手を思いやる気持ちの欠如から、全てを失ってしまいました。私の欲が強過ぎ、相手の気持ちや利益を軽視したことが理由です。きっと相手の方は私のことをGreedy (強欲) なやつだと思い、裏切られたと感じたことでしょう。自らの利を求めるばかり、相手の利を軽んじた結果です。信頼は一日にして成らず、損なうには一瞬で十分であることを痛感しました。

 私はいつも研修の中で信頼を得るには傾聴と共感が何よりも大切ですよと、皆様にお伝えしています。しかし、私自身が全くできていませんでした。実にお恥ずかしい限りです。この痛い経験を通して、「信頼」の深い意味をじっくりと考える機会に恵まれました。相手の方には迷惑千万な話ではありますが、私にとっては貴重な経験でした。

「自利利他」のマインドセット
 実を言うと、前述の信頼を損ねた経験には後日談があります。信頼を失うと、相手との人間関係が壊れてしまいます。同時に相手がいたからこそ得られたものまで失います。この期に及んで、私はそれを失うことを怖れ、執着してしまいました。相手を十分傷付けたのに、私は自分の傷を最小限に止めようと策略をめぐらしたのです。自らが信頼関係を傷付け、失っても仕方がないのに、性懲りもないですね。つまり、そこでも私の「欲」が再び顔を出し、存在していたBenefitまでも失ってはならないと強欲になったのです。

 ちょうどその時、ある方のアドバイスがあり、かつて読んだ本の中で書かれていたことを思い出しました。一人一人は体の器官のようなものであること、自分自身の体の一部を傷付ければ、体全体が苦しみます。右手が傷付けば、左手に負担が余計に掛かり、結果的に体全体が苦しむのだという文脈のイメージが私の中でよみがえりました。もうこれ以上、傷付けるのは止めよう。自分の欲や自分のBenefitのことばかり考えるのは止めよう。ここは自らの利を失っても、相手の利を優先しようと決心することができました。これは全く美談でもなく、私という人間の中で起きた心の葛藤の実例です。昨年のブログでは「利他」について偉そうに書きましたが、実のところ分かっていなかったのです。この経験を通し、自分の汚い心に直面し、自らの利と他者の利はつながり、決して分断されていないということを学ぶことができました。改めて「自利利他」の初歩的なマインドセットを持つことができたように思います。

学びは「宝」
 大人は学ぶ必要性を感じないと学びません。また講義だけで学ぶことは不十分です。むしろ、経験を通して学ぶことがとても重要です。今回のブログでは、「幸福」について、そして私の恥ずかしい経験を通して「信頼」と「自利利他」についてのマインドセットをどのように獲得していったのかを書いてきました。振り返ると、日常の生活の中や、仕事の中で、私たちは多くのことを経験しているのです。そこにはたくさんの「学び」があり、それを気付くか気付かないかは、本人の意識がどこに向いているかによるのです。ただ経験をすれば良いのではないのです。そのことを私自身がこのブログを書いていて、気付き、勉強になりました。国営放送の「チコちゃんに叱られる」という番組で、5歳の女の子が、何も考えていない大人のゲストに対して「ボーっと生きてんじゃねーよ」と毒づきます。私も叱られないように毎日を生きようと思わされました (笑) 。

 リカレント教育、リスキリング、アップスキルなど大人の学び直しに関するワードを毎日のように目にしたり、耳にしたりします。これらが大切なことは言うまでもありません。しかし、私たちはあらゆるところで、学ぶこともできるのです。学びから得られるものは、まさしく「宝」です。秘められている宝は、秘かなところに隠されています。それを探し当てるところに楽しみがありますね。意識すれば、きっと見つかるのではないでしょうか。

最後に
 「心はそれ独自の場所である。その中で地獄から楽園を作り出すことも、楽園から地獄を作り出すこともできる」
ジョン・ミルトン『叙事詩「失楽園」』より

 

本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

未来への道標 A guide to future

新里 幹彦(ニッサト ミキヒコ)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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