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人への投資、自分への投資、そしてアドラー心理学

人への投資、自分への投資、そしてアドラー心理学

新しい資本主義
以前執筆したブログ「人的資本 (ヒューマンキャピタル) を高める」、「ハイブリッドワークで生まれた新しいコミュニケーションの課題」では人的資源・資本について触れました。

人材を「コスト」としてではなく、「資本」として考えることを強調しているのが岸田首相の「新しい資本主義」の重要な点です。企業の経営状態を評価するため、財務情報を開示するだけではなく、人材に関する「非財務情報」の開示を求める方針を打ち出しています。例えば、従業員の能力開発に提供している研修時間、研修費用、参加率の開示、従業員の多様性、男女間の給与格差、従業員のエンゲージメントスコア、離職率などが挙げられます。

これから人事部や経営企画に関わる部署の責任は、ますます重要になってくることでしょう。

ESG投資プラスα
「ESG」とは、Environment (環境)、Social (社会)、Governance (企業統治) の頭文字を組み合わせた造語です。これらの3分野にしっかりと取り組む企業に対して、投資家や金融機関は投資しています。これは時代の流れです。それに加えて、今では人材に対しても積極投資をしている企業にお金が集まるようになってきました。

あるアセットマネジメント会社は、人への投資に積極的な企業のファンド運用を新しく始めました。これは従業員による評価が高い企業は格段に好業績を達成し、株価も上昇していることが数字にもはっきりと表れているからです。つまり、人への投資は企業価値に与える影響が大きいということです。ただ単に、人的投資している企業は「人に優しい、良い企業だな」というレベルを超えて、確実に企業価値を左右します。

自分への投資
政治も企業も人に対する投資を積極的に展開しようとしています。このことを私は非常に重く受け止めています。リスキル、アップスキル、リカレント、さまざまな言葉で能力開発の必要性が叫ばれています。肝心の自分自身は何をしていますか?皆さんはどうでしょうか。自分自身に対して、お金と時間をかけて、積極的に投資しているでしょうか。

私は何もしないことはリスクだと考えています。私たちの未来は何もせずに乗り越えられるような甘い未来ではないと予測しています。自分に投資したのに、それほど厳しい時代でなかったのなら、努力して損したと思わずに、ラッキーだったと思えば良いことです。しかし、生活するのにも苦労する世の中が現実に来たとしたら、自分に費やした努力が自分を救うのです。自分に投資することで、失うものは何もありません。

カリヨン・ツリー型のキャリア
リンダ・グラットン*は人のキャリアはいくつもの小さなカリヨン (教会の釣鐘) が連なり、職業人生を形作るようになり、今後の主流になると言っています。これをカリヨン・ツリー型のキャリアと言います。
*イギリスの組織論学者で、著書『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』が有名。

例えば、精力的に仕事に打ち込む期間、長期休業して学業やボランティアに専念する期間、仕事のペースを落としてプライベートを優先する期間、そのようにジグザク模様を描きながらキャリアを築くパターンです。さまざまな時間・経験が組み合わさって、キャリアを美しい音を作り出す教会の鐘に例えているのかもしれません。

伝統的なキャリアの考え方と比較しても、カリヨン・ツリー型のキャリア論は柔軟性が高く、生産的に活動を続けることを可能にする考え方です。これは人間の寿命が長くなったからだと言われています。職業人生も伸びました。退職という概念をなくすことを提唱している人も増えています。

もし私たちの職業人生・キャリアが伸び、長くなるのなら、自分の刃 (能力) は自分で研ぎ続ける必要があります。そのままで良いわけはありません。現状維持は通用しません。政府の後押しもあるので、ある程度は企業が能力開発に手を貸してくれることでしょう。しかし、やはり主体は自分です。自分の職業人生・キャリア、人生を会社に任せてはならないと、私は自分に強く言い聞かせています。

すべては自分の選択 ― アルフレッド・アドラー
心理学で有名なフロイトは、自分を取り巻く環境や過去の経験が今の自分を作り上げているという「原因論」を提唱しました。それを真っ向から否定したのが、オーストリアの精神科医のアルフレッド・アドラーです。有名なアドラー心理学のアドラーです。

アドラーは今の自分を作り上げているのは、環境や過去などの原因ではない、自分の選択が今の自分を作り上げていると言っています。不幸な自分になってしまったのは、愛してくれなかった親や貧しい子供時代ではなく、自分を不幸だと意味付けた自分がそうしているのだというのがアドラーの見解です。すべては自分の選択にかかっているということです。

この考え方は厳しいと思いますが、私は真理だと考えています。フロイトの原因論には救いがありません。なぜなら環境や過去は、どれだけ努力しても変えられないからです。しかし、アドラー心理学に立って考えると、人は選択できます。選択できるのなら、たとえ間違ったとしても、選択し直すことができます。人は変わることができます。自分の選択によって、自分は変わることができます。反対に自分は変らない、変われないという選択もできてしまいます。皆さんの選択はどちらでしょうか。

私自身が実験台
私は、数年前に大学に戻りました。そして4月からは修士課程に挑戦しています。簡単にいってしまうと、このままの自分ではダメだな、未来はないなと思ったからです。勉強する必要があると考えたからです。もう一つの理由を正直に言うと、私は古いタイプの人間の50代男性です。新しい考え方や世の中の風潮に異を唱えることも少なくありません。大学院でダイバーシティやインクルージョンを研究していますが、学習することで、自分がどれだけ変わることができるのか、成長することができるのか、自分自身を実験台にして、人は変われることを証明したいと思ったからです。こんな自分でもきっと変われるのではないかとアドラーさんを信じたのがきっかけです。

人生は短距離でなく、長距離マラソンです。しかし、ボーっとしているとあっという間にゴールが間近になってしまうこともあり得ます。しっかりと長距離を走り切る体力を養っていきたいと思います。

私たちは皆さんの伴走者でいたいと願っています。

最後に
「やる気がなくなった」のではない。「やる気をなくす」という決断を自分でしただけだ。「変われない」のではない。「変わらない」という決断を自分でしているだけだ。
アルフレッド・アドラー

 

本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

未来への道標 A guide to future

新里 幹彦(ニッサト ミキヒコ)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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