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人工知能 (AI) で成功するには 経営者と管理職のための10ステップ
人工知能 (AI) が、大きな変革をもたらすことはほとんど疑いの余地がありません。今後10年間、あるいはそれよりもはるかに早く、AIは私たちのビジネスのあらゆる側面に影響を与えるでしょう。
しかし、変化は受け入れがたいものです。多くの組織にとって、現状維持は強固な力を持っています。そのため、従業員は次のように言うでしょう。
「今やっていることは、うまくいっています」
「長年同じ手順をやってきたのに、なぜ今変える必要があるのですか」
「日常業務で忙しすぎて、新しいテクノロジーをどう活用するかなんて考えられません」
では、AIを受け入れるだけでなく積極的に取り入れる組織に、経営者や管理職はどのようにして変えていけるでしょうか。イノベーションや新しい試みを推奨する組織文化をどのようにして育むことができるでしょうか。
米国AMA (American Management Association) の専門家は、AIの取り組みを体系的に計画、実行し、評価するための10のステップを紹介します。
1. AI運営委員会を設置する
あらゆる取り組みには計画と監督が必要です。AI運営委員会は、シニアリーダー、専門分野のエキスパート、データサイエンティスト、IT専門家など、複数の部門からなるチームで構成するべきです。後述するように、AIは異なる部門にさまざまな形で恩恵をもたらします。そのため、運営委員会には幅広い代表者が必要です。
2. 戦略的目標を定義する
大規模なAI投資の戦略的目標は、通常、企業の主要な競争上の優先事項と一致します。例えば、銀行は不正行為の検出やリスク評価、顧客サービスにAIのリソースを集中させることできます。自動車メーカーは、自動運転車の研究に多額の投資を行うことが考えられます。
また、消費財メーカーは、サプライチェーン管理や需要予測のためにAIを活用するかもしれません。ハーバード・ビジネス・レビューによると、10万社以上のサプライヤーを抱えるウォルマートは、AI駆動のチャットボットに購買交渉を任せ、調達チームが戦略的な関係、例外対応、継続的な改善により多くの時間を割けるようにしました。
3. 潜在的なAIのユースケースを特定し、優先順位を付ける
AIソリューションを実装するためのリソースは限られています。特に複雑なものはなおさらです。そのため、運営委員会は、戦略との整合性、実現可能性、そしてビジネス成果に対する潜在的な影響をもとに、さまざまな業務機能や部門にわたってAIのユースケースを特定し、優先順位を付ける必要があります。
4. 組織の準備状況を評価する
組織の準備状況は非常に重要です。AIも他の技術と同じように、受け入れ態勢が整っていない組織に無理やり導入できません。組織がAIに対して準備不足であったり、 (雇用喪失の懸念から) 抵抗を示したりしている場合、投資は失敗する可能性が高いでしょう。
AI導入の準備状況を見極めるためには、次の5つのグループを特定することが大切です。5つのグループとは、ステークホルダー、スポンサー、推進者や協力者、反対者、パートナーです。これらのグループに適切なスキルを持った人を割り当てて、洞察力、技術力、チェンジマネジメントにおいての不足部分を見つけることが重要です。
5. 潜在的な影響、ROI、および必要なコスト/投資を判断する
他のビジネス投資と同様に、このステップでは予想される利益を定量化し、開発や保守を含む推定コストと比較することが求められます。直接的なコストと利益だけでなく、間接的なコストと利益も考慮する必要があります。
6. リスク、課題、および倫理的考慮事項を評価する
リスク、課題、倫理的考慮事項には、次のようなことが含まれます。データプライバシーの侵害、規制違反、組織変革による混乱、アルゴリズムや学習データのバイアスによる不公平な扱いなどです(リスクに関する詳細な説明については、こちらのブログをご参照ください)。
7. ビジネスケースを作成する
ビジネスケースを作成するためには、まず問題点や理想的な解決策を特定し、その解決策にどのようにAIが役立つかを判断します。次に、その解決策がもたらすメリットを明確にしなければなりません。メリットとは、その解決策がコスト削減、効率向上、収益の拡大、あるいは顧客満足度の向上をもたらすものかどうかです。最終的には、ビジネスケースでは解決策を組織全体の目標と合わせます。
8. ステークホルダーを特定し、関与させる
ビジネスリーダー、エンドユーザー、対象分野の専門家などのステークホルダーを関与させ、フィードバックを求め、洞察を得る必要があります。これはITチームやデータサイエンスチームに完全に任せるべき活動ではありません。
マーケティング、営業、顧客サービスなどの非技術系のチームメンバーを関与させることで、問題解決力が向上し、課題が特定され、使いやすさが改善され導入につなぐことができます。
9. 従業員をトレーニングする
トレーニングと能力開発プログラムは不可欠です。従業員は役割に応じてAI技術を活用するために必要なAIリテラシー、技術的スキル、および専門知識を習得できます。その結果、従業員はAIの可能性について、大いに議論できるようになります。
10. AIのポリシー、機会、成果についてコミュニケーションを図る
組織のAIフレームワーク、取り組み、利点を周知させることは、テクノロジーへの支持、熱意、そして勢いを築くために重要です。これらの10のステップが示すように、AIの管理と実装は、経営者、管理職、スタッフを含む通常の組織の大部分に関わってきます。AIは、IT部門のみに任せるべきテクノロジーではありません。
*本記事は米国AMA (American Management Association) で配信されたものを、許諾を得て掲載しています。
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