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「人的資源」「人的資本」という言葉におぼえる違和感
唐突ですが、「きっと大多数の他の人は何も感じず、すんなりと受け入れているけれど、私という人間はどうしても心の底から100%は同意できない」そのような思いを持たれたことはないでしょうか。さまざまな企業・組織・団体の人材育成のお手伝いをしている中で、ずっと感じていた私なりの「違和感」について、今回は書きます。あくまでも、私個人の見解であることを最初に断っておきます。
人的資源と人的資本
過去の私のブログでも「人的資源」と「人的資本」という言葉を使ってきました。人的資源管理 (Human Resource Management) をしっかりとやりましょうとか、人的資本への投資をしましょうのような文脈で使ってきました。しかし、いつも使いながら、しっくりときていませんでした。何となくですが、「資源」と「資本」という言葉にずっと違和感がありました。また昨今は紙面で「人的資本」という言葉を見ない日はありません。
そもそも人的資源 (Human Resource) と人的資本 (Human Capital) にはどのような違いがあるのでしょうか。人的資源は「人、モノ、カネ」の経営資源の内の一つであり、人を費用・コストとして見なす考え方です。人的資本の資本は、その人が持つ能力やスキルを資本と捉えます。資本ですから、投資の対象となり、将来的な企業価値向上を目指し、リターンを得ようという考え方です。
どうして「人」を資源や資本と結びつけるのかと疑問を持ちます。人をコスト、費用、投資、価値、リターン (売却益) などにつなげる必要はあるのでしょうか。きっと分かり易いからでしょう。私も株式や投資信託を購入します。もうかれば、もっと買っていれば良かったと思い、価値が下がったら、何で早く売って資金を引き揚げなかったのかと毎回一喜一憂します。
「あなたはコストです」と言われたら、誰でも憤るでしょう。「あなたにこんなにも費用を掛けなければ良かった」「あなたにもっと投資していれば良かった」と言われても、同じく不快な気持ちしか残りません。少なくとも私は嬉しくはありません。
働く人たちを「人的資源」と見なすことは、コスト・費用、そしてデータ (情報) として扱うことを意味し、その人の存在 (Being) ではなく、単に労働力の側面として見ていることになります。
また「人的資本」という言葉を使うとき、どれだけ投資しているか、どのように投資内容を開示するか、その後、どれくらい他者 (市場) から良い評価を得ようかという不純な動機を感じ取ってしまいます。私自身は、人は資源でもなければ、資本でもないと考えます。青臭い意見のように聞こえますが、もっと働く人を「人間」として接し、尊重してはどうでしょうか。
自戒
自分が相手を見る時、相手も自分を同じように見ます。もし「モノ」として見られたり、軽く扱われたりすれば、私はすぐに勘づき、分かります。そして、その人とは親密にはならないでしょう。しかし大切に接してくれれば、私もその人を尊敬し、大切な人として接します。きっと皆さんもそうではないでしょうか。
メディアや紙面において、人的資源と人的資本という言葉を見ない、聞かない日はありません。まるで流行語のようで、この流れは止まらないことでしょう。私は違和感を持っていたのに、便利だということで使ってしまっていました。人材育成に携わる身として、恥ずかしい限りです。今回のブログは自戒の意味がありますが、他人に強要するものでもありません。戯言として受け止めていただければと思います。
最後に
「人からしてもらいたいことは何でも、あなたがたも同じように人にしなさい。」聖書
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