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リスキリングしてMBAを取りました! その2 獲得編

リスキリングしてMBAを取りました! その2 獲得編

はじめに

前回のブログでは、横浜国立大学大学院で2年間学び、2024年3月に経営学修士 (MBA) の学位を取得しようとした動機について書きました。今回は、その学びからどのようなことを得たのかについて書いていきます。

カリキュラムと卒業までのプロセス

2年間を通して、講義は20単位以上 (通常2単位/クラス) 、演習は12単位 (必須) を履修しました。そして、集大成として「特定課題論文」と呼ばれる修士論文を書き上げました。

最終試験はプロジェクト報告会という形で行われ、プレゼンテーションを行います。教授陣や卒業生、同級生、下級生の前で修士論文を発表し、質疑応答を経て評価を得られれば、晴れて卒業、経営学修士号 (MBA) を取得できます。このプロセスは、多くのビジネススクールでも同様に進められていると思います。

学びの充実と自己主導の重要性

私は「今この時を楽しもう」と決心していたおかげで、大変充実した2年間を過ごすことができました。前回も述べましたが、他者からの強制的なプレッシャーで始めた学業ではなく、自分の意思で始めたので、学びたいという好奇心と集中力を持続させることができました。この2年間は、後に振り返っても人生のハイライトと言えるかもしれません。

横浜国立大学大学院は「世界で最小のMBA」とも言われています。1クラスは通常6~10名で、2クラスしかありません。私の所属したクラス (演習) は6名のみで、指導教官である教授が2名体制で、本当に至れり尽くせりの指導を受けることができました。

研究テーマとアプローチ

私たちのクラスは、「企業のダイバーシティ&インクルージョン (D&I) 戦略:人的資源管理論 (HRM) と組織行動論 (OB) からのアプローチ」をテーマに、それぞれがより解像度を上げた具体的な研究を深めました。

日本のD&Iは海外諸国と比較しても、必ずしも進んでいるとは言えません。一般論や経験則に頼ることなく、理論的なフレームワークや実証的なデータに基づいて考察を進めました。D&Iを推進するために、人材の価値を最大限に引き出し活用することを目指すHRMや、組織における人間行動の解明に焦点を当てたOBの立場からアプローチしました。

幅広い知識の習得と応用

これらの専門的な研究を支えるための基礎知識も必要でした。そのため、授業を平日の夜や土曜日終日に履修しました。具体的には、財務、会計、マーケティング、戦略、経営、サステナビリティマネジメント、組織変革、HRM、経営史、社会学、リサーチメソッドなどの分野から、自らクラスを選び受講しました。

ビジネススクールであるため、学生は皆、仕事が終わった後に時間をやり繰りして授業に臨んでいました。人によっては、残業や出張、家事、育児とさまざまな事情がありましたが、多くの人々の助けを借りながら、皆で2年間を乗り切ることができました。

学業を継続できたこと自体が感謝すべきことであり、最初は不安もありましたが、それらを乗り越えて「楽しむこと」に集中できたのは大きな成果でした。リスキリングは、楽しむという決心と主体的に取り組むというマインドセットが非常に重要だと思います。

社会科学としての経営学

自然科学は自然を対象とし、実験を通して原理原則を探究する学問です。例えば、水の沸点は100℃でそれ以上にはなりません。誰がやっても結果は同じで、再現性があります。対して、私が学んだ経営学は社会科学に属し、同じ実験をしても同じ結果が得られるとは限りません。つまり自然科学のように再現性はありません。

例えばある企業の経営者と同じ手法をとっても、同じ結果が得られる保証はありません。環境や条件、人間が異なるため、再現性がないのは当然かもしれません。それでは経営学を勉強して何の意味があるのでしょうか? 役に立たないのでしょうか?

そんなことはありません。経営学を学ぶことは非常に意義があります。とても役に立つ学問です。多くの人の成功や失敗した経験やデータから原則を見いだし、そこから私たちはスタートできるからです。そうでなければ、私たちは全てのことをゼロからスタートしなければならず、時間と労力の無駄になってしまいます。

社会科学である経営学は、私たちが仕事をする上で非常に役に立つ学問です。経営学について学んでいる、またを知っているということは大きなアドバンテージです。そのことを「リサーチメソッド」という授業の初日に学ぶことができました。役に立つということが最初から理解できたので、とても勉強に身が入りました。

私が携わっている人材育成という仕事と、今学んでいることがどのように関連付けられ、役に立つのかということを絶えず意識していました。私の学びが机上の空論や絵空事に終わらなかったことは当然の結果だと思います。

私たちが提供する研修も、受講される皆さまの役に立たなかったら何の意味もありません。学びを通していかにお客様の役に立てるのか、一層その思いは強まりました。ビジネスの世界とアカデミアの世界をつなぐ架け橋になりたいという志を深めることができました。

多様な背景と考え方の重要性

ビジネススクールでは、多くの学生が社会人である点では共通していますが、所属する企業や団体、従事している仕事の種類は多種多様です。日本企業に勤める人と外資系企業に勤める人、サラリーマンと経営者、それぞれが異なる視点や深さを持っていました。

「経営組織」という授業では、同じ本を読んでも全く異なる解釈や正反対の意見が出ることがありました。「組織変革」という授業では、毎週ケーススタディを扱い、熱い議論が交わされました。全く相いれないこともありましたが、白熱していた授業を懐かしく思います。

これらの授業で学んだのは、人が持つ先入観や仮説は、その出身や背景によって全く異なるということです。徐々にではありますが、「ああ、そのような意見もあるのだ」と受け止めることができるようになってきました。

ギザの三大ピラミッドを見たとき、歴史的な背景を知っていれば大きな驚きと感動に包まれることでしょう。しかし何も知らなければ、ただの大きな石が積まれているようにしか見えません。相手の背景を知ること、知識を持つこと、それによって相手への理解が深まります。

このことは、D&Iを研究する私にとっては大きな教訓となりました。仕事や家庭生活、友人関係との間でも役立っています。前回のブログでは、「古い典型的な日本人だと自認している私がD&Iや組織行動を学ぶことで、どれだけ成長し変わることができるかを見てみたい、自分自身を実験してみたい」と書きました。この点では私自身が自分の変化に一番驚いています。

学び続けることの重要性

ブラッド・ピットが主演した映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の中で、主人公のベンジャミンが手紙に「人生に遅すぎることは何もない。いつ始めてもいいんだ。変わるものも、変わらないのも君の自由だ」とつづったシーンが印象的です。年齢を理由に諦める必要はなく、新しいことへの挑戦に年齢は関係ないことを伝えています。

大学の学部で勉強したいと思ったのは、私が51歳の時でした。そこで2年間勉強し、それだけでは飽き足らず大学院に進んだのが53歳。そして55歳でMBAを取得しました。“It's never too late to learn.” 「学ぶのに遅すぎることはない」ということ声を大にして私は言いたいです。リスキリング、アップスキル、学び直し、いろいろな言葉が氾濫しています。これらの言葉にとらわれるのではなく、皆さまに「学び続ける」ことを心からお勧めします。

最後の感謝

唐突ではありますが、諸事情のため、私のブログは今回で最後です。これまで多くのブログを書いてきました。少しずつ読者が増えていったこと、ただただ感謝です。まだお会いしたことのない「あなた」を思い浮かべて、ブログを書いて参りました。ぜひ、過去のアーカイブもご覧いただけると幸いです。

私は、長男から「父さんも勉強するといいよ!」と言われたことをきっかけに学び始め、本当に良かったと思います。まさにその通りでした。そして、皆さまにも「勉強するといいよ!」というメッセージを最後にお送りしたいと思います。

皆さま、心より感謝を申し上げます。
皆さまが幸せでありますように。

 

本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

新里 幹彦

新里 幹彦(Mikihiko NISSATO)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。リスキリングを目指し、2024年3月には横浜国立大学大学院でMBAを取得。

 


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