3時間のオンライン研修で効果的にコミュニケーション能力を強化する
新しい一手! | 人材育成の未来を切り開く
3時間のオンライン研修で効果的にコミュニケーション能力を強化する
ビジネスの現場では、研修で想定した通りのことだけが起こるとは限らない
コミュニケーション能力を強化する研修を提供するときは、ビジネスの現場で活用してもらう状況を想定しながら設計し、提供しています。そのため、実践の場で活用するスキルを練習することや、学習することに多くの時間を費やします。しかしながら、実際に現場でコミュニケーションする状況では、研修で想定した通りには進まず、事前に想像していた相手の反応と実際の反応が大きく異なる場面や、相手の機嫌が悪く話を進めるどころではないことが・・・。または、過度に緊張してしまうことや、嫌な出来事があり、気持ちが落ちかない状態でコミュニケーションせざるを得ない場合もあるのではないでしょうか。そして、この想定外の状況でも効果的なコミュニケーション能力を発揮するための講師からの多くのアドバイスは「経験」と「慣れ」。あとは練習、練習、練習!・・・決して非効率だとは思いませんし、私たちもこのようなコミュニケーション研修を多く提供しております。しかし、このような方法だと短時間、且つ効果的にコミュニケーション能力を強化することは困難です。そこで今回私たちが挑戦した「新たな一手」は、短時間で効果的に、そして研修内で想定したこと以外の状況でも、コミュニケーション力を発揮できる能力を強化する研修を設計・提供することを目指しました。
様々な施策のあとにたどり着いた打ち手 ~ Do(行動する)からBe(自分のあり方)へ~
たどり着いた打ち手は、マインドセットに注力した短時間のコミュニケーション研修 です。米国の有名なセースルパーソン、作家、モチベ―ショナルスピーカーであるジグ・ジグラーの考えで「You’ve got to be before you can do and do before you can have. 」というのがあり、それに近い発想になります。Do(行動する)の前にBe(自分のあり方)、Have(成果を得る)の前にDo(行動する)、という意味になります。
前述のように、コミュニケーション研修において、多くの時間はスキルの練習などの“Do”に費やされているところを、今回はジグ・ジグラーの考えを参考にし、“Be”のマインドに、より多くの時間を費やして研修を設計してDo-Haveに繋げることを意識しました。
これまで、“Do“に、より多くの時間を割いているコミュニケーション研修を提供する立場での経験が多くあるため、「コミュニケーションスキルを理解するには最低でも2日間は必要で、それでも現場で使いこなせる状態までにはできません。」などと言う説明を、何度も顧客にしていました。しかし、オンラインでの研修が増えてきた中、1つのコミュニケーション研修に、2日間も費やすことが困難になってきました。
そこで、いままでのコミュニケーション研修の設計時の発想を変え、“Be“に、より多くの時間を費やすことを考え、目的意識を明確に持って、正しい姿勢や思いでコミュニケーションの場に挑めば、想定外の状況になっても自然に適切な表現が使え、今まで学習してきたコミュニケーションスキルを、臨機応変に活用できるようになるのではないか? という仮説を立てました。
限られた時間の研修で効果を最大化するための仕組み
研修効果を高める40:20:40の法則*1に則り、研修を設計することが肝要です。特に研修前に受講者自身が、どうして研修に参加する必要があるのか、何を学習するべきか、というレディネス(Readiness)*2と自己認識(Self-awareness)*3を高めることが重要です。以下に、これらの意識を高めるために有効だと思われる事前課題の具体例を紹介します。
*1 「40:20:40の法則」」: ロバート・ブリンカーホフ博士が、ASTD(米国人材開発機構)で発表した研修の効果に影響を与える3要素(研修前の動機付け等・研修そのもの・研修後のレビューや実行環境等)のバランスのこと。
*2 レディネス(Readiness): 学習する側に必要な条件(知識や経験など心身の準備)や環境が整っている状態。新しい学習を習得しやすくするために必要と言われている。
*3 自己認識(Self-awareness):自己に意識を向け、自分の感情、長所や短所など、自分自身を深く理解すること。
- ・上司と部下間などで行われるコミュニケーションに関してのアンケートやサーベイを実施する。
- ・研修で学習する内容を活用している状況を特定し、自分の課題を書き出してくる。
- ・研修前に、コミュニケーション能力に関するアセスメントを受験し、自身の傾向、強み、弱みを理解し、研修に臨む。
レディネスと自己認識が高まっていると、受講者の知識の吸収速度は加速します。さらに「足し算ではなく、掛け算で学びを加速させる」 ことを目指し、受講者間の相互学習の場を効果的に組み込みます。受講者一人の課題・事例に対して、他の受講者が全員で自分の経験や考え、アイデア、アドバイスを具体的に提供することを促進していくのです。
グローバル企業でのオンラインによるフィードバック力向上研修の紹介
昨年、日本に本社があるグローバル企業において、日英両言語によるフィードバック力向上研修を実施しました。こちらの企業では社員のほとんどがリモート勤務になり、上司と社員間のコミュニケーションに変化が生じ始めていた頃、ご相談を受けました。元々1on1文化が根付いており、多くの社員は上司の聴く姿勢(傾聴)に高い満足度を示していましたが、反対に「良く聞いてくれてはいるが、それで終わり」「厳しくても良いので、自身の成長につながるフィードバックが欲しい」という意見が多数の社員から寄せられたのが、導入のきっかけです研修はオンラインで3時間。トレーナーによるレクチャーは極力短くし、ディスカッションやアセスメント結果のレビュー、ケーススタディを多く取り入れました。また、参加者自らの気付きを起こさせ、実際にフィードバックする状況下でも、自分のマインドを正しく設定できるような仕掛けを散りばめています。
特にアセスメントは、自分がフィードバックをするときに、どのようなマインドセットで相手に対峙してフィードバックするべきかを考えるツールとしても使用しました。
また、レディネスと自己認識を高めるために事前課題を可視化し、短時間の研修を効果的に進められるように設計しました。
当日のスケジュール(例)
<事前課題の内容>
レディネスを高める施策
研修前には客観的なサーベイ結果(1on1に関するサーベイ)を読むことを受講者に課し、部下の不満の理由、期待を把握してもらいます。
自己認識を高める施策
Thomas Kilmann Assessment(トーマスキルマンアセスメント)というオンラインアセスメントを必ず事前に受験してもらいます。他人とのコンフリクト時に自身がどのような行動の傾向を示すかを客観的に測定するものです。これは自己認識を高め、研修で伸ばすべき点を事前に明確にすることが目的です。
継続的なパートナーシップを結び、さらに先を目指せる喜び
研修に対する満足度について、受講者の100%近い方が、満足、または概ね満足と回答されました。また、1on1に関するアンケート調査を研修実施前と、研修実施後に実施したところ、1on1の実施率が、約10%あがっていました。さらに、部下の1on1満足度は、3%向上しており、研修導入後の良い傾向が数字にも表れています。今年も部下持ちのマネージャー全員が受講することになっています。
担当者の方と知恵を出し合いながら作り上げた研修が、一定の評価を得られたことに満足しています。打ち合わせなどで、お客様と同じ目標と課題感を共有しながら、さらなるプログラムの改善を一緒に目指すことで、さらに新しい施策を生み出していくことに喜びを感じます。
より現場で活かせるコミュニケーション能力を高めるために
今回ご紹介した“マインドセットに対するアプローチ”であれ、また、従来通りの“スキルの学習と練習に重きを置いたアプローチ”でも、事前課題、研修、事後課題だけでは、受講者の言動に大きな変化がみられるほどの学習効果を出すことは稀です。私たちの思いとしては、そのような状況を少しでも変えていくために、より効果的な研修のフォローアップ方法や、より強いインパクトを受講者に与えられる研修方法に挑戦していきたいと考えています。さらには、VRやARを使った疑似体験が、コミュニケーションスキルの練習の代わりになり、それがあたかもリアルな経験をしたかのような状況を作り出していく未来。そして、マインドセットに関しても、より精度の高い、様々なアセスメントの開発で自己認識を高めていく未来を見据えて、それに近づけるように様々な取り組みに挑戦していきます。
下記よりお気軽にご連絡ください。