新しい一手!チェンジマネジメントで「行動変容」を引き起こす階層別研修
新しい一手! | チェンジマネジメントで「行動変容」を引き起こす階層別研修
チェンジマネジメントで「行動変容」を引き起こす階層別研修
昇進・昇格のタイミングで実施することが多い階層別研修ですが、研修の受講前後で受講者の行動変容が見えにくい研修でもあります。特に昇格など、役職は変わらず等級のみが上がる場合は、これまでの業務内容や周囲のメンバーに変化が少なく、受講者にとっては行動を変えるきっかけや機会に恵まれることも滅多にありません。
このようなことが起きてしまう理由は、階層別研修の目的が役割理解 ― その役割に求められるスキルの取得 ―となっており、多くの場合、現場でそのスキルを発揮し、具体的な成果を出すことを目的として設計されていないからではないでしょうか。これは、役職や等級が同じ受講者でも、それぞれの現場で期待されている成果や役割の違いがあることにも起因しています。
今回紹介する「新しい一手」では、そのような階層別研修でも、受講前と受講後で、受講者の行動変容が見られるような人材育成を設計することに挑戦しました。
前例のない状況が理想像をゼロベースで描けるチャンスに
これまでの標準的な階層別研修は、2~3日間の合宿型集合研修で、1クラス30名~40名を数クラス同時に行っていました。しかし、昨年はCOVID-19の影響で、対面での集合研修ができなくなり、オンラインでの実施を余儀なくされました。このような前例のない状況においては、過去の成功事例を踏襲することはできません。しかし、この状況をチャンスと捉え、階層別研修の理想像をゼロベースで構築することもできます。今回の挑戦は、階層別研修の理想的な姿である「研修終了後に、昇格した等級の期待役割を、受講者が現場で体現できるようになっている」ことを達成するための最善の方法を考え、研修を設計することが求められました。
チェンジマネジメントのモデルを人材育成の設計に組み込む
私たちは、チェンジマネジメントのフレームワークを研修の設計に取り入れることにより、受講者の言動を変え、階層別研修のあるべき姿を実現できるのではないかと考えました。チェンジマネジメントは、人の言動を変える成功事例の共通点をリサーチし、作り出された考え方です。もしかしたら、チェンジマネジメントというと、組織を変革するときに使う概念のようなイメージがあるかもしれませんが、MBAで学ぶ際は、心理学的な観点で個人の変化を促進する動機付けにも言及されるほど、とても幅の広い分野です。世界有数の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが、数年前に行った変化・変革に関するリサーチの結果を、今回の階層別研修を設計するときの参考にしました。そのリサーチでは、人の意識や行動を変える次の4つの重要な要素として下記を紹介しています。
人の意識や行動を変える4つの重要な要素
(1)その変化を体現しているロールモデルの存在
(2)自分に求められている変化とその理由の理解
(3)自分に求められる変化を実行するのに必要なスキルの習得機会と発揮できる機会
(4)変化に沿った社内プロセスやシステム
(1)その変化を体現しているロールモデルの存在
(2)自分に求められている変化とその理由の理解
(3)自分に求められる変化を実行するのに必要なスキルの習得機会と発揮できる機会
(4)変化に沿った社内プロセスやシステム
中堅社員の行動変容を促す半年間の階層別研修
先日、大手内資企業からお任せいただいた半年間の中堅社員向け階層別研修では、200名を10クラスに分け、すべてオンラインで実施しました。
研修の全体像
上図全体像のキックオフセッション~Stepを、「人の意識や行動を変える4つの重要な要素」の(1)~(4)に当てはめながら、下記に個別でご紹介します。
- キックオフセッション [半日] (Liveオンライン)
「人の意識や行動を変える4つの重要な要素」(以下「4つの重要な要素」)の(1)と(2)を中心に設計しています。
ここでは、本階層別研修の目的と、その目的を達成するための研修全体像を説明し、受講者に何が求められているのか、なぜそれが求められているのかの背景を明確に伝えます。また、社内にいる同じ等級のロールモデルに登場してもらい、それぞれの方から現状と、昇格した時の課題・学び・気づきなどを話してもらいます。 - Step1:学びと実践 [2か月]
「4つの重要な要素」の(1)と(2)と(3)をつなげるように設計しています。
動画講義では、3つのコンテンツ(期待役割の詳細、多様性の重要性、目標設定スキル)を学習。その後、新しい等級として求められる役割に基づき、現場で新たに実践すべきことを上司とミーティングで決め、Step2までに実践と結果の振り返りを行います。 - Step2:振り返り [半日](Liveオンライン)
「4つの重要な要素」の(2)を中心に設計しています。
ここでは、実践した結果の振り返りを全員で行います。全員で行うことで、新しい等級に求められる役割と、現場での行動例のすり合わせをすることを目指しました。 - Step3:実践 [2か月]
「4つの重要な要素」の(3)と(4)を中心に設計しています。
新しい等級で期待されている役割が求められるタスクに、グループで取り組んでもらい、受講者が新しい行動を継続的に発揮する場を提供します。また、Step1で設定・実践したことを再設定し、個人で取り組んでもらいます。 - Step4:振り返り[1日] (Liveオンライン)
「4つの重要な要素」のすべてをカバーした設計をしています。
今まで実践してきたこと、学習してきたことのすべてを振り返り、総合演習で自分の現状の理解や行動を確認します。Step4の最後には、継続して自己研鑽をしていくための能力開発計画を作成し、研修終了後に上司と共有します。
周囲から見えた行動変容
全ての研修終了後に、受講者とその上司にアンケートを回答いただきました。研修の前後で「受講者の行動変容が見えたか?」という上司への質問の回答が、5段階評価*1で3.5の評価が得られました。受講者本人が感じている自己成長の度合いも、5段階評価*2で4.1の評価が得られました。
半年間かけて、学習と実践を繰り返すことで、本人も周囲も感じられるほどの行動変容を見ることができました。さらに、副次的な効果として「在宅勤務・リモートワークにもかかわらず横のつながりができた」などのコメントもアンケートで書かれていました。
*1 5段階評価の内訳:1(全く変化が見られない) ~ 5(周囲が気づくほど行動に変化が見られた)
*2 5段階評価の内訳:1(全く成長を感じられなかった) ~ 5(すべての研修内容が自己成長につながった)
*2 5段階評価の内訳:1(全く成長を感じられなかった) ~ 5(すべての研修内容が自己成長につながった)
次なる課題
終身雇用や年功序列、新卒一括採用などの人事制度の流れもあり、これまでは、昇進・昇格した人が同年代や同じ年次でした。しかし、ここ数年で状況は大きく変わり、同じ階層別研修に参加していても、保有している経験やスキル・知識のギャップが目立つようになりました。前回の「新しい一手」で紹介した、人材育成のパーソナライゼーション ~e-Learningの学習効果を高める仕組み~のような取り組みと階層別研修の組み合わせが今後は必要になっていくかもしれません。
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