新しい一手!世界各国の社員を集めたグローバル研修

 

今回の一手

世界各国の社員を集めたグローバル研修を100%オンラインで ~オンラインのメリットを最大限に活かす~



グローバルで活躍できる人材を発掘し、育成する

グローバル市場で事業を展開する日本企業では、グローバルで活躍できる人材を育成することが、重要な経営課題の1つであり、将来を左右する投資として認知されています。

グローバルで活躍できる人材とは、クロスカルチャーな組織で効果的にリーダーシップを発揮し、事業を任せられる人材を指します。語学力や業務の専門性、コミュニケーションスキルを持ち合わせていることは勿論のこと、オープンネス、積極性、チャレンジ精神、協調性、柔軟性、責任感といったマインドセットや態度、及び多様性や異文化を理解する力が求められます。それに加え、自社の歴史や組織文化、理念、価値観、戦略などの理解も必要となります。
多くのグローバル企業は、毎年、様々な工夫をしながら、国籍や居住地に捉われず、グローバルで活躍できる人材の育成に取り組んできました。世界各地からハイポテンシャル人材を選抜し、本社のある日本に集め、自社に関係する重要な施設の見学や上層部の講話、他部署の人との交流機会を設けると同時に、数日間のマネジメントやリーダーシップ研修を受講させることが一般的ですが、各社、グローバルで活躍できる人材を育成する独自の「型」のようなものを持ち、次世代を担うグローバル人材を育成しています。



多国籍社員が一堂に会するグローバル研修が中止・延期された本当の理由

2020年に発生したパンデミックに伴い、国際的に人の移動が大きく制限され、企業の人材育成の取り組みも大きく変化せざるを得なくなりました。受講者を一箇所に集めて講師による講義が行われる、いわゆる「集合型研修」の実施は困難になり、中止や延期となりました。代わりにWebex、Zoom等のオンライン会議ツールを使用した、「オンライン研修」の実施が一般的になってきました。

しかし、日本人だけではなく、世界各国の社員も参加するグローバル研修は、実施を断念する企業が続出しています。新型コロナウイルス拡大による事業の悪化が原因で、人材育成投資の縮小、または海外子会社の清算や組織の統廃合により、その必要性自体が消滅したというケースもありますが、主な原因は、渡航の制限により、国境を越えたリアルな交流の場を準備できなくなったことです。日本人だけで実施するグローバル研修とは異なり、このような研修は、海外で働くメンバーを日本へ呼び寄せることにも大きな意味があり、受講者もそれを期待していました(インセンティブ効果)。また、オンライン研修を行うにしても、タイムゾーンが合わせづらいこと、そして何よりグループワークで行うアクションラーニングスタイルでの学びの機会を創出できないため、止む無く中止されるパターンが多く発生しました。

 



グローバル研修をリモート環境で行う際の3つのヒント

一方、従来の「型」とは違う方法で研修効果を高めることに果敢に挑戦し、グローバル人材育成を継続する企業も少なくありません。そのような企業の特徴として、新しいことに挑戦する企業文化という一面もありますが、グローバル人材の緊急度と重要度が高く、育成に対する投資を止めるわけにはいかなかったことが最大の理由です。
クインテグラルは、このような複数のクライアントと、リモート環境でのグローバル研修の企画及び実施のサポートをする中で、集合型研修とは違うやり方であっても、同等の研修効果を得られるノウハウを発見することができました。

 

1. 研修期間と時間の配慮

一つ目のヒントは、タイムゾーンに配慮した時間設定と、アクションラーニングの効果を高めるための十分な研修期間の設定です。

多様な国から受講者が集う研修を実施する場合、なるべく多くのタイムゾーンと重なる時間帯を選ぶ必要があります。そのため、1回の講義時間は従来よりも短くなりますが、その分研修期間を長く設け、短時間の講義を複数回設定することによって、講義内容をカバーします。

オンライン研修は、PCやデジタル端末のような比較的小さな画面に集中する時間が長くなります。そのため、連日長時間受講すると、身体的な負担がどうしても大きくなりますが、1回の受講時間を短縮することによって、このようなデメリットをカバーすることもできます。また、1日のうちの全ての時間を研修に割く必要がないため、日々の業務を完全に止めずに研修に参加できるメリットも生じます。
さらに、研修期間を長くすることで、アクションラーニング型のグループワーク*1に充てる時間や期間が増え、グループ内での交流や協働体験を通し、グローバルリーダーシップを養う機会をより多く経験することができます。これは、もはやリモート化の副産物とは言えないくらいの大きなメリットになります。

*1 アクションラーニング型のグループワーク:リアルな課題に対して、グループで解決策を企画立案(提案)し、場合によってはその提案を実施するところまで行い、そのプロセスから学びを得る手法。その企業にとってリアルな課題を設定すること、成果物を明確にすること、そしてプロセスを振り返る機会を与え、確実に学びにつなげることが設計する際の注意点となる。


2. 受講者人数の適正化

二つ目のヒントは、タイムゾーンに配慮した受講者人数の適正化です。

集合型研修では3、40人近くの受講者を一箇所に集めて行うことが可能ですが、多国籍の受講者が集うオンライン研修の場合、なるべく複数のタイムゾーンが重なる時間を有効活用するため、受講者の居住地域を絞る必要があります。そのため、受講者人数を制限した選抜型研修にするのが効果的です。受講者が多いと、発表や質問時間が短くなり、各個人の学びや満足度も低下するリスクが生じます。なお、グループワークは、1グループにつき、4~5名が適正人数と言われています。そのため、1回の研修につき、最大16名程度(4名/グループ×4グループ)が適正な受講者人数であると考えられます。
対象者が多くなる場合は、時差の負担を軽減できるように、プログラムの一部を受講者の居住しているタイムゾーン別にグループ分けし、同じ内容を2回実施することで受講者数を適正化することも可能です。

従来よりも選抜される人数を限定することは、本社経営層と直接対話する機会が増えるなど、インセンティブ効果を高め、本社のある日本へ渡航できなくとも、研修へのエンゲージメントを高めることも期待できます。

 

3. ブレンデットラーニングの活用

最後のヒントは、オンライン研修とLMS(学習管理システム:Learning Management System)を活用した多角的な学習支援を行うことです。

オンライン研修では、Webex、Zoom等のオンライン会議ツールを通した講師による講義だけではなく、目的に応じたデジタルツールを活用し、様々な形態で学びをサポートすることにより、研修効果を高めることができます。LMSを使用することにより、受講者の進捗管理ができるだけではなく、研修の狙いに応じた文献の掲載やe-Learningコンテンツとの連携、講義動画の共有など、情報の一元管理を可能にします。

知識のインプットやケーススタディなどは事前学習として提示し、講義は、主にディスカッションを主体としたインタラクティブな学びを得られるような設計にします。それにより、受講者同士の繋がりや、コミュニケーションの促進を図ります。なお、事前学習は、学習時間を自由に設定できるような学習コンテンツや参考文献をLMS上に準備することで、全体の学びの設計にバリエーションを持たせることが可能となり、集合型研修に比べ、デジタルコンテンツの活用によるリソースの幅も広がります。



アクションラーニングを効果的に活用したフルリモートでのグローバル研修を提供

上記3つのヒントを踏まえ、グローバル展開するコングロマリット企業で実施した「新しい一手」の具体例を紹介します。

昨年、パンデミック下ではあったものの、グローバルリーダーシップ研修を継続的に実施する顧客からご相談がありました。渡航制限があり、海外拠点のメンバーを集めることが出来ないため、フルリモート環境でのアクションラーニングをご提案し、組織横断で受講者を募ったところ、最終的には12名での実施となりました。
人材育成担当者と綿密な打ち合わせを重ね、研修期間を2週間に設定し、講師によるオンライン研修を4日間設けることにしました。オンライン研修の効果を最大限にするため、ベースとなる知識については、e-Learningや講義動画をLMS上で配信し、受講者が自由な時間に学べるように事前課題として準備しました。

<スケジュール(例)>


アクションラーニングの課題設定
今回実施したアクションラーニングの課題設定は、「将来の新しいビジネスを提案する」としました。取り組む期間が約2週間と限られていたため、以下にフォーカスしました。

  • 外部環境のトレンドをリサーチ・分析し、今後高まるであろうニーズを特定、それを満たすためのビジネスアイデアまでを、成果物とする。
  • 学習内容は、外部環境の分析方法やトレンドをカバーする。
  • 企業のビジョン、コーポレートバリュー、戦略や戦術に沿ったものにするために、受講者に必要な情報を提供する。

  • なお、受講者の主体性を発揮させ、グローバルビジネスの実務に近い経験をしてもらうため、LMSで共有した情報以外の外部情報については、制約を設けず推奨することにしました。

    リモート環境で協働するのに必要なスキルのインプット
    経験学習の機会を設けるため、研修後半にグループワークを設定しました。
    グループワークを効果的に行うため、「ダイバーシティ&インクルージョン」「コラボレーション」「グローバルコミュニケーションスキル」など、グローバルに活躍する人材に必要なスキルを事前にインプットしてもらいました。

    経験を振り返り、知識と実践を結び付ける
    アクションラーニングはプロセスそのものが学びに繋がるので、グループワークの振り返りは必須です。そのため、成果物(主にプレゼンテーション)の発表後だけでははなく、随所で活動の振り返り期間を設けます。それによって、確実に学びは深まります。今回は更にグループコーチングの機会を作り、成果物の進捗確認だけではなく、そのプロセスを振り返り、改善に繋げられるような設計にしました。

    リモート環境でのアクションラーニングの成功の鍵
    リモート環境でのアクションラーニングを、そのままグローバルビジネスでの実務経験とするため、以下について配慮することが、成功の鍵となりました。

    ■ アクションラーニングの説明は、講師(ファシリテーター)が介入できる環境で行う
    講師が介入できる環境を準備することにより、インストラクションを明確にするだけでなく、受講者やグループ内で生じた質問や疑問についての回答やフィードバックを、その場で全員に共有することができ、誤解が生じにくくなりました。
    ■ グループ毎にグラウンドルールを考えてもらう
    グループで集まる最低限の回数を決め、プレゼンテーションにも全員が必ず参加できるようにする等、メンバー同士の関わりを担保するような内容にしてもらいました。
    ■ 組織のトップから、組織の現状や解決策への期待を述べてもらう
    受講者によりリアルな現状を体感してもらうことで、組織に対するエンゲージメントを高めることができました。
    <受講者の声:一部抜粋>
    「トップのメッセージを直接聞くことによって、目指す方向がクリアになった」
    「会社のミッションやビジョンが明確になったことにより、今すべきことや考えるべきことが具体的になった」



    オンラインツールで更に拡がる可能性

    顔を合わせて行う集合型研修でのグループワークとは違い、よりグローバルビジネスの実状に即したリモート環境での協働作業は、実務に直結した学びを得ることができます。

    グローバルで活躍できる人材を育成する研修をオンライン化するには、オンラインツールの活用が必須となりますが、ノウハウを得てしまえば、今までの集合型研修を上回る研修効果を創出できる可能性があります。
    確かに、受講者同士が直接顔を会わせるからこそ分かり合えることも沢山あり、施設の見学などは現地に行かないと体験できないことですが、「会えないからやらない、会えないからできない」ことではなく、研修効果を最大化するためにできることはないかと考えれば、可能性はまだまだ広がっていく領域であると確信しています。

    リモート環境下で行う効果的なコミュニケーション方法や、プロジェクト進捗管理、グループディスカッションの実施方法を、同時に経験できるオンライン研修は、パンデミック終息後も実施されていく新しいグローバル人材育成の潮流となりそうです。

    リモート環境での講義は、講師自身も移動の必要がなく、しかも短時間での実施になるため、世界中のより専門性が高い講師陣を講義内容ごとに変更して研修を組み立て、比較的コストをかげずに実現できることも魅力ではないでしょうか。


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